設計：稲沢設計室
場所：石川県
撮影：鶴見哲也（Life is wonder）
築60年以上の古民家を一軒丸ごとリノベーション。
既存の天井の低さや表の梁を活かし、懐かしさを残しながら、上手く新しい素材を挿入している。
玄関を開けるとダイニングキッチン、リビング、濡れ縁、庭への奥行き感が心地良い。
この心地良さは、既存の田の字型を活かした巧みなゾーニングと、そのゾーンごとに異なる雰囲気で空間がつくられているからだろう。
また、このゾーンは障子、造作建具によって仕切ることができ、それぞれ独立した空間として使えて便利である。
日本家屋の田の字型プランの要素を踏襲し、建具の開閉による連続性と独立性を上手く活かした空間づくりが秀逸だ。
ダイニングキッチンは、日本家屋ならではの低い天井に対して、リビングは屋根に合わせた勾配天井。
このギャップにより、ダイニングキッチンは籠もった落ち着いた雰囲気、リビングは開放的な雰囲気と性格が異なり、相互に活かしあっている。
素材として既存の天井や梁を残すだけではなく、空間思想においても田の字型プランの名残を上手く活用しており、リノベーションの好事例と言えるだろう。
以上のことから、建築写真の撮影のポイントはこちら。
・古民家らしく、薄暗い部分を大切に撮影しつつ、黒潰れ防止で照明を部分的に点灯
・田の字型の間取りの踏襲を表現するため、間仕切りの建具を開閉しながら撮影
・垂直水平のグリット構図で、勾配天井の形をしっかり表現
・事例写真として見た時のアクセントとして、人の視野に近い標準域のレンズで、生活のシーンを感じさせる写真を撮る
（※コメントは、建築写真家として捉えた私見です）
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