設計事務所が竣工写真に感じる違和感
私が暮らす石川県のような地方としてには、竣工写真を専門にするカメラマンがいない。
物件数の少なさや、撮影までこだわりたいと考える設計者の少なさが原因です。
だから、専門特化していないオールマイティーなカメラマンが地方都市では重宝される。
そんなカメラマンが撮影した竣工写真に対して、設計事務所の人は違和感を感じることが多い。
- ただただ広いだけ(広角すぎる)
- パースの効いた構図しかない
- 昼間なのに電気が点けられている
他にも色々あるが、共通しているのは「設計意図がわかってない写真」ということです。
設計意図を理解するには、建築の知識が必要。
しかし、一般的なカメラマンに、建築の専門知識を求めるのは難しい。
そこで、設計事務所が喜ぶ竣工写真になる3つのポイントをご紹介。
3つのポイントを押さえることで、設計意図を読み取った風になりやすいです。
1.窓から見える景色を白トビさせない
窓には、太陽の光、風、外の風景を室内に採りこむ意図で設計されています。
設計が上手ければ上手いほど、窓の配置がとても効果的。
ただ撮れば光は入りますが、室内と外の明るさの差が大きいので白トビか黒つぶれが起きてします。
写真は1ヶ所の明るさを基準にしか撮れないから、このようん現象は置いてしまいます。
また、人の目はとても優秀で、自動的に合成した様子を見せてくれている。
そこで2つの写真を合成することで、イメージに近い写真に仕上げることができます。
この技術は、風景写真に用いられる露出ブレンドという手法です。
露出ブレンドを用いれば、窓の向こうにある風景をしっかり残せ、窓に込められた設計意図を表現できるでしょう。
正直、少し現像の手間がかかるので、ここぞと言う時に使ってみるのがいいかもしれません。
2.パースの効いてない構図も撮る
竣工写真を撮影する際、とにかくに広々と開放的に対角線から撮るカメラマンが多い。
しかし、このワンパターンだと設計者目線では物足りない。
なぜなら設計意図の中には、それ以外にも考えたことがあるからです。
特に、吹き抜けのLDKなんかは、意図した部分が多くあり、1枚の写真では説明できません。
そこで以前のコラムでも解説しましたが、構図を上手く使い分けてみましょう。
詳しくは以前のコラムを読んで下さい。
ここでは概要だけまとめておきます。
パースを効かせて撮る
<特徴>
- 遠近感が出て、開放感を表現しやすい
- 全体像が伝わりやすい
- 手前のものが大きく、奥のものが小さく写り、構成がわかりにく
<特徴>
- 水平垂直がしっかりしていて、落ち着いた印象に伝わる
- 距離感がないため、空間構成が説明しやすい
- 開放感は弱くなる
3.広角レンズ以外も使う
建築写真と言えば、超広角レンズをイメージします。
使っている機材一覧は、こちらの記事からチェック!
撮影していても感じるのですが、建築空間全てが超広角レンズだとつまらないんですよね。
しかも、広角レンズで見る写真は、人の視野角と差が大きい。
そのため実際の建物を見に行った時と、かけ離れたイメージになることもあるでしょう。
そこで空間表現の幅を広げるため、標準域(24-70mm)のレンズもアクセント的に使います。
ほぼ同じ位置から、超広角の17mmと標準の35mmで撮った2つの写真。
注目したのは、階段の蹴込み板を抜いているところ。
開放感のある空間にしたい意図に対して、視線が抜けるような配慮が考えられます。
17mmの場合は、パースが効きすぎて階段に違和感がある。
それに対して35mmは、程よく圧縮されていて、階段の奥にもしっかりと注目できます。
階段の蹴込み板を抜いた意図を説明するのであれば、35mmの方が適切でしょう。
それに加えて、階段だけを撮った写真があるとより効果的です。
建築写真は写真だけで見せるよりも、説明するテキストと一緒に掲載されることが多い。
写真も1枚だけではないため、組写真とテキストのセットと考えるといいかもしれません。
だから、何をどのように説明したいかイメージしながら撮影するのが大切です。
それがわからない場合は、とりあえず珍しそうなものを標準域のレンズで撮っておきましょう。
それが撮れるかどうかが、設計者目線での痒い所に手が届いてるかどうかの違いになります。