1.外観写真を撮る下準備

建築写真の依頼を受けた時に、設計事務所や住宅会社に必ず図面を送ってもらう。
建築士として図面を描く側の仕事をしていたため、図面を読んで空間を事前に把握のが目的。
その図面から、外観をきれいに撮るための下準備を始める。
まず、美しい外観写真は、順光よりの測光で建物の立体感が出る影が落ちていて、背景の空が青い状態が好まる。
その状態を予測するために、図面で住所と方位を確認する。
当たり前のことだが、この当たり前のことから調査、分析してベストなタイミングで撮影してこそ美しい外観写真が撮影できる。
Googleのストリートビューで住所を検索し、近隣の建物の状況を確認。
建物の高さ(何階建て)、離隔距離を確認し、撮影予定時刻を想定する。
撮影したい外観が東向きなら午前、南向きなら正午、西向きなら午後となる。
更に何月の撮影かによって太陽高度が変わるので、そこも要チェック。
太陽高度が低く、太陽の位置と被る建物の高さが高い場合、被写体である建物に太陽光が差さないことになるので、美しい状態では撮影できない。
ここまで下準備すれば、現場に行ったはいいけど条件が悪くて撮影できないといったリスクを回避できる。

2.撮影で使用するレンズ

建築写真と言えば広角レンズというイメージだが、それは被写体との距離がとれない内観の話、または首都圏の高層ビルの場合。
地方で住宅の外観を撮る場合が多い私は、標準域のレンズ(24-70mm)を使うようにしている。
理由は、人の目で見た印象に近づけるためだ。
人の目で、鮮明に見えている部分はおおよそ50mmのレンズで見ていると言われている。
そのため、この画角に近いもので見る建物のプロポーションが、一番しっくりくるという風に考えられる。
広角だとパースが効きすぎて間延びするし、望遠だと圧縮効果で潰れた印象に見えてしまう。
内観では被写体となる空間との離隔がとれないため広角レンズを使うが、外観の場合は離隔がとれる場合が多く、標準域のレンズでも十分に対応可能だ。

3.撮影時の視点の高さ

同じ建物で、2種類の写真を見比べよう。
どちらの方が、建築写真っぽいだろうか。
おそらく左側と答える方が多い。
その理由は、落ち着いた佇まい、垂直水平というのが建築写真が持つイメージであり、そのイメージに近い写真が好まれるからと考えれらる。
右側の写真はローアングルから見上げており、上に尖っていて、垂直水平はとれていないため、落ち着いたイメージを受けない。
左側の写真は垂直水平がとれていて、構図としても空と陸が二分割で、陸の半分ぐらいの位置に建物の中心がくるような高さにカメラを構えているため、落ち着いた佇まいが際立っている。
この違いは、カメラを構える高さと構図取りにある。
構図づくりで、建物の重心をどこに置くかによって印象が変わる。
空の面積が少ないと窮屈な感じがするし、逆に大きすぎると間延びして見える。
一般的な写真の構図の作り方における、三分割構図や二分割構図を意識して撮ることがオススメ。

4.青空をより青く撮る

青空をより青く、かつガラスの映り込みを軽減するためにPLフィルターを用いることがある。
PLフィルターはPolarized Lightの略で偏光という意味。
不要な光の反射を除去する効果があり、風景写真では水面の水鏡効果を強めたり、逆に抑えたりすることに用いる。
PLフィルターを建築写真で用いることで、ガラス面への映り込みを軽減できると共に、青空をより鮮明に写すこともできる。

PLフィルターを使っていない写真
PLフィルターを使った写真

僅かかもしれないが空の青色や、右奥の緑の発色の違いがある。
写真を撮らない人には微妙な差で分からないかもしれませんが、この微妙な違いを詰めていくことで写真の印象はグッと変化していく。
ちなみに、PLフィルターなしの場合は、ガラス面にカメラの三脚や撮影している私の姿が鮮明に写ってしまったため、扉を開けて撮影した。
その後、PLフィルターを装着して撮影することでガラス面への映り込みが軽減でき、三脚などもレタッチ無しで目立たないよう仕上げることができた。
気象条件、光の向き等、適材適所ではあるが、PLフィルターをカバンに入れておくことで現場での対応力は変化する。

5.建築写真・竣工写真で外観を美しく撮るコツ

・住所と方位から近隣状況と太陽高度を把握する
・標準域のレンズで人の目に近い印象で写す
・落ち着いた印象になるような構図をとる
・PLフィルターという選択肢もある

以上、私が外観写真を美しくするコツでした。

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