1.建築写真事務所ってどこにあるの

写真業界の中でも、建築写真はとてもニッチなジャンルになる。
建築写真専門で生計を立てられるのは極僅か。
腕の良い建築写真事務所は、東京、大阪、札幌、名古屋などの大都市圏に偏っている。
では、私が住んでいるような地方都市はどうかと言うと、建築写真専門と看板を掲げている写真事務所は無いに等しい。
仕事の数が限られていて、専門特化型では採算が合わないからだ。
建築写真に限った話ではなく、あらゆる写真のジャンルで特化が難しい。
多くは、一般的な写真館、写真スタジオにお願いして撮ってもらう。
または、大都市圏の腕の良い建築写真事務所に出張費を支払って依頼する場合もある。
毎回出張費を支払うのは、設計事務所にとって手痛い出費だろう。
そのため写真のクオリティとコストのバランスを見極めて、適切な写真家に依頼しなければならない。

2.建築写真の腕が良いってどういうこと

適切な人選をするために、知っておきたいのが腕の良し悪し。
建築写真の腕が良いって、どういうことなのだろうか。
建築に限らず、写真は写真の知識だけでは撮れない。
被写体への理解やクライアントの要望に対して、最適な選択として写真の知識、技術を用いて表現する。
よく「一眼レフカメラを使えば上手に撮れるのでは?」と言われることもある。
しかし、被写体や要望に対する理解度に対して最適な撮影技術を活かせば、機材なんて問題ないことも多い。
場合によっては、スマートフォンでも上手く撮れる。
(最適な機材であれば撮りやすいので、良いにこしたことはない。)
この話は、目的と手段を明確に切り分けて考えられているのかということだ。
要望に適した写真を撮るために、目的をしっかりと理解できているか。
理解するために、被写体となるものへの知識を持ち合わせていたり、分析できているか。
そして、表現する手段のために、最適な機材選定や撮影技術を持ち合わせているか。
これらが噛み合った時、初めて最高な写真が撮れる。
手段となる部分は、プロとして撮影しているのであれば、みなさん一定水準の技術があるので心配いらない。
差が出るのは、目的の部分だと私は考えている。
建築写真においては、目的理解に必要な要素の一つに設計意図を理解できているかがある。
ここが腕の良し悪しの差になり、写真家選びのポイントだ。
良し悪しの差を「センス」という曖昧な言葉に置き換えてしまいがちだが、明確な差があることは覚えておいてほしい。
そこには何らかの技術があり、習得する努力をしているので、その差で選んでいきましょう。

3.写真家を1人に絞る

写真家選びのポイントがわかれば、次はどのように使い分けていくか考えていきたい。
依頼者側として、写真家の目的理解を見定めるのが苦手であれば、良いと思った写真家1人に絞るのが良い。
なぜなら写真家には個性があり、撮る写真の雰囲気が異なるからだ。
例えば、白い壁を青味がかった白にする人もいれば、オレンジ色味がかった人もいる。
この辺りは好みもあり、どちらが正解という問題ではない。
雰囲気の異なる写真を、自社サイトの施工事例に掲載した際、将来のクライアント候補がどんな印象を受けるか考えながら眺めてほしい。
写真のテイストがバラバラだと、その会社の設計に統一感が無いように感じてしまわないだろうか。
良いものもあれば、そうでもないものもあるという見え方になってしまう。
ギャラリーとしての美しさを考えた際、最も手っ取り早いのが写真家を1人に絞って、同じ雰囲気にまとめるのが楽だろう。

4.写真家を使い分ける

一方で、あえて別々の写真家に依頼している場合がある。
それができる会社は、写真家の得意不得意を理解し、この住宅なら写真家のAさん、この店舗ならBさんの雰囲気が合うと判断している。
自社の作品を、最も良い状態で撮影してくれるため、自社サイトの施工事例はどれもクオリティーの高い写真が並ぶ。
これはこれで、美しいギャラリーになり、将来のクライアント候補を魅了することができるだろう。
建築の営業の難しさは、できるまでわからない所にある。
いかにして、「完成前に良いものができる」と想像させるかが大切だ。
住宅においてはモデルハウスが、想像させる方法の一つになっているが、モデルハウス以外に雰囲気の違うイメージを訴求するには、良い写真は欠かせない。
自社の作品を最も良い状態で写真に残し、次のクライアントにつなげる。
そのために、建築写真事務所や建築写真家の選定にこだわってほしい。

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